Ahead of the Curve -日本から世界へ-

~日本、世界、社会を考えるブログ~

日本酒道 3 - もうひとつの軸-

お酒を味を形成する要素って様々。醸造酒の場合は、甘味、酸味、辛味、苦味、渋味が複雑に絡み合い味を形成する。この点において、ワインと日本酒は似ている。その複雑な要素から形成された味と料理をあわせることで、双方の可能性を最大化される。それこそがお酒を楽しむ醍醐味のひとつ。

 

でも、日本酒にはもうひとつ特殊な軸がある。それは”温度”という軸だ。日本酒って本当に面白いもので、温度によって味も香りもそれぞれの顔を持つ。そもそも皆さんは、この”温度”においてこれほど厳密に呼称が異なることをご存知だろうか?悠久の歴史の中で、それぞれのお酒に最適な温度があるということを人々は知覚し、いつしかそれが呼称となって今日存在しているのだと思う。この精密な定義が日本人らしいし、和食というものの深みを感じる。そして何よりも、この”お燗”という軸は世界に存在しない、日本が世界へ誇るべき軸であると思う。

 

55度以上 飛びきり燗(とびきりかん)
50度 熱燗(あつ燗)
45度 上燗(じょうかん)
40度 ぬる燗
35度 人肌燗(ひとはだかん)
30度 日向燗(ひなたかん)
20度 冷や
15度 涼冷え(すずひえ)
10度 花冷え(はなひえ)
5度 雪冷え(ゆきひえ)
0度 みぞれ酒

 

これだけデリケートなお酒なのに巷ではそうはなっていない。たとえば、お燗を電子レンジで温める飲食店が多く存在する。実は、これは科学的に間違ったやり方。アルコールの沸点は78度。これを超えると気化してしまう。そして電子レンジで一気に温めるとアルコールは飛んでしまうし、しかもそれが電子レンジだと急に温まる部分とそうでない部分に差が出てしまい、結果として奇妙な”お燗”になってしまう。そのようなお酒をお客様に提供すれば、日本酒の味が悪くなるに決まっている。日本酒の市場が縮小したことは決して偶然ではない。

 

日本酒をお湯でゆっくりと温めることには理由がある。日本酒の成立ちには理由がある。