Ahead of the Curve -日本から世界へ-

~日本、世界、社会を考えるブログ~

捻香(ひねか)

とあるお鮨屋さんにいってきた。そこそこ評判のしっかりしたお店。以前行った時にその美味しさにえらく感動したため、今回は友人を誘って2度目のトライ。座ればコースが勝手に始まる素敵なお店。

 

お鮨といえば日本酒。早速注文したところ、店主は新しい一升瓶をあけてくれた。口に含んでみたら、瞬間的に口の中で違和感を覚えた。なんとそのお酒は劣化していた。きっと、普通の人が飲んだらもちろんその劣化を「劣化」と捉えることはできないと思う。良くわからず「日本酒ってあんまりおいしくないね」程度の印象だろう。したがって指摘もしないだろう。でも、実際その開けたばかりの日本酒は劣化していた。店主は、申しわけなっそうに他のお酒に変えてくれた。「酒屋に文句を言っておきます・・」と。日本酒は、ワインと同じように然るべき管理が必要なお酒。蛍光灯の光にも非常に弱い。温度管理も重要だ。放っておくと、捻香(ひねか)という匂いが出てきて、とても飲めたものじゃない。

 

実は、この現象は他のお店でも数度経験したことがある。しかも高級店でだ。なぜこういうことがおきてしまうのか?それは、すし職人やシェフは、あくまで最高の料理を作ろうとする。日本酒は酒屋におまかせ。そして管理にも力を要れず、ソムリエのように実際開封した後の匂いや味のチェックなどしない。最高級の素材を使ってどんなに美味しい料理を創作しても、お酒が劣化しているだけでもの凄い機会損失が生まれていると思う。

 

ここにワイン市場が成長し、日本酒市場が衰退した理由がある。

 

美味しい日本酒とは信じられないほどに美味しい。そして、それを相性のよい料理とペアリングすることで、その可能性はさらに増大する。日本酒ソムリエでも、唎酒師でも呼称何でもよいが、美味しいお酒を届ける人の育成は、日本酒産業において至極重要なことだと思う。すばらしい歴史と伝統を持つ酒蔵が最高のものを作っても、ラストワンマイルで伝達に失敗しては元も子もない。