Ahead of the Curve -日本から世界へ-

~日本、世界、社会を考えるブログ~

日本酒

近年、日本酒に関する記事を各種メディアで目にするようになった。データによると日本酒の2016年の輸出額は155億円と7年連続で過去最高を更新したそうな。毎年ダブルデジットで成長してるもんだから、その成長性をメディアも謳う。

 

まず、成長することは衰退することよも、もちろん素晴らしいことであり、ドンドン成長してほしい。しかし大事なファクトは、成長率が高いのは分母が小さいからだということ。小さい市場が少し大きくなれば、成長率は+20%でも+50%にもなってしまう。単純な事実だ。

 

客観的にみれば、日本酒の海外での市場は155億円に過ぎない(ここでは海外生産の額が入っていないので、現実の海外市場はもう少し大きい)。一方、ワインの世界市場は10兆円とも言われている。まず、この事実を認識しなければならない。

 

かつて、欧州のワイン市場も日本の日本酒市場と同じように国内消費は衰退の一途をたどった。あのロマネコンティも倒産の危機を迎えたこともある。でも、そこから欧州のワイン産業は、一丸となってマーケティングを駆使し世界に羽ばたいた。様々な地でワインが飲まれるようになり、様々な地でワインも生産されるようになり、それぞれの地に文化として根付いていった。

 

その歴史的背景を見たときに、日本酒産業はAmbitionを持つ必要がある。155億円ではなく、10年で1兆円の市場を世界で創出するにはどうするか?だ。そのためには、どの市場でも同じことだけれども、様々なプレーヤーが参入し、様々な人が日本酒を製造し、様々な人が日本酒を語らなけれならない。

 

近年、中田さんが日本酒を世界に推しているのことを知る人も少なくはないだろう。是非ドンドン海外に向けて日本酒を語ってもらいたい。他にも、著名人、セレブにドンドン海外に向けて日本酒を語ってもらいたい。重要なマーケティング&プロモーションだ。


一方、もう一つ大事なポイントは、海外で飲まれる日本酒は美味しくなくてはならない。シンプルな事実として、マズイものは売れない・飲まれない。美味しさに感動して初めて、口コミと次の消費が生まれる。海外に行くと(実は、日本でも同様だ。国内市場の衰退の理由はここにもある)、HOT SAKEみたいな感じで、とてつもなく熱いSAKEが出てくることがある。でも、アルコールの沸点は78度であり、それ以上では酒は蒸発し奇天烈な飲み物になってしまう。顕著な例は電子レンジで作ったお燗だ。一気に熱するために、蒸発した部分・そうでない部分が入交り、ファンキーなお燗ができてしまう。歴史的に、日本酒のお燗が湯銭でゆっくりと作られてきたことには理由がある。(参考:日本酒は、ワインと同じように管理も重要だ。でもその管理は多くのお店でないがしろにされている。それが結果として日本酒をまずくしている。結果として、市場を破壊している。一例をあげよう。以前ある程度高級なお寿司屋さんに行った際に、日本酒を注文した。でも出てきた日本酒は劣化していた。普通の客であればそういうもんだと思って飲んで、二度と飲まなくなるだろう。もちろん僕にはそれが本来の味でないことはわかる。ではなぜそうなるのか?そこにもシンプルな事実がある。その寿司屋の店主は、毎日車で来ているので酒を試飲しない。そもそも、職人が客前で日本酒を試飲してから出す文化は日本にはない。だから、劣化したことを知らずにお酒をだす。実は、この経験を僕は他の寿司屋でも計3回くらい経験している。ワインのソムリエが、試飲してから客にワインを出すことには意味がある。ラストワンマイルでのこの差が、市場を創る中で大きな差となっていると考える)。

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海外での消費を増やすには、日本酒を美味しく飲むことができる空間と、それをいざなう人材が必要だ。問題は常に勃発してるけれど、今僕はこれを香港で実践している。

 

マーケティング × 伝える仕組み&人(実際のおいしさ )× プレーヤーの参入=市場拡大